電力システム設計

対応範囲

  1. ケーブル技術設計
  2. 土木技術設計
  3. 架空線技術設計

1.ケーブル技術設計

地中送電線

FENが扱う主な地中送電線は、高圧・特別高圧に分類されるトリプレックス型CVケーブル、単心CVケーブル、3心CVケーブルとなります。これらケーブルを、埋設管路内に引入れる、地上トラフ内に収める、暗渠(洞道)や開渠(ピット)内の棚に収めるといった電線路を設計します。

ケーブル送電容量設計

ケーブルには導体・遮へい層・金属シースなどの金属体による伝熱と、絶縁体・防食層・周囲空気への熱放散による熱抵抗が発生します。通電時の発熱による温度上昇に対し導体の許容温度が決まっていて、熱によるケーブル絶縁体の寿命的観点から、通電時に導体許容温度を超えない電流値を設計する必要があります。設備の発電容量から必要となる電流量を計算し、最適なサイズ、条数のケーブルを選定します。

ケーブル端末設計(耐汚損設計)

ケーブルが接続される機器の仕様に応じて適した端末材料を選定し、各機器との取り合いを確認します。気中端末の場合は、台風等により吹き上げられた海水中の塩分が碍子に付着することがありますが、塩分が付着した碍子は湿潤状態になると絶縁低下を起こし、事故の原因となります。塩分が付着した際にも十分な絶縁力を保持できるよう、設置場所の状況に応じた端末材料を選定します。

接地設計(シース回路設計)

ケーブルへ通電すると様々な熱による損失が発生しますが、そのうち、ケーブル遮へい層に発生する損失は接地設計(シース回路損)やケーブル仕様に依存し、送電容量に影響を与えます。ケーブル仕様、ケーブルスパン長、中間接続部の設置可能場所および布設方式などを考慮し、最適な接地方式(両端接地・片端接地・クロスボンド接地)を提案します。

ケーブルヘッド(気中端末)架台設計

ケーブルを変電機器や架空線と接続するために使用する気中端末を設置するための架台設計を行います。架台設計時は、充電部(端子や電線等)同士の離隔や充電部と大地(大地と同電位の非絶縁物を含む)との離隔を考慮し、安全な絶縁間隔を確保します。ケーブル及び端末材料の垂直・水平荷重に耐えるため強度計算も実施します。

引入張力・側圧計算

管路にケーブルを引入れる際にケーブルに加わる引っ張り力(引入張力)や管路曲がり部で管路とケーブルの接触面に加わる力(側圧)を計算して、ケーブルにダメージ無く品質を保って布設できることを確認します。
ケーブルのスパン長や管路曲げ半径を検討する際の一つの指標となります。

熱伸縮設計(オフセット設計、スネーク設計)

ケーブルは送電による発熱によって熱伸縮をします。トリプレックスケーブルの場合は撚り合わせによって伸び出しが吸収されますが、単心ケーブルの場合は管路内のケーブルが地中箱(マンホール, ハンドホールなど)へ数cm~数十cm程度伸び出してきます。その伸び出しをうまく逃がすために地中箱内に予め曲がりを与えておくこと(オフセット設計)で吸収させます。また、洞道やピットでの布設の場合は伸び出しを逃がすために一定間隔で蛇が蛇行するようにケーブルを曲げておくこと(スネーク設計)で伸び出しを吸収させています。

垂直布設設計

鉄塔や洞道立坑部など高低差がある場所において、ケーブルの自重や熱伸縮を考慮して、どのようにケーブルを支持するか設計をします。予めケーブルを蛇行させておくこと(垂直スネーク設計)や、拘束間隔などを算出します。

滑落移動対策

管路の傾斜部ではケーブルの自重とケーブル熱伸縮の影響により数年を掛けてケーブルが管路内を滑り落ちていくことがあります(滑落現象)。それにより管路上流側では地中箱(マンホール, ハンドホールなど)内のケーブルが管路へと引き込まれて接続部が支持材から浮き上がる事例や、逆に管路下流側にはケーブルが大量に伸び出し許容曲げ半径を割ってしまう事例もあります。現状では引き込まれたケーブルを元に戻す方法が無いため、事前に滑落量を推定し、対策の要否を検討します。

波乗り移動対策

車道下の管路で車の進行方向にケーブルが移動する現象(波乗り移動現象)が起きる場合があります。主な要因は、①交通量が多い、②真っすぐな管路線形、③車両重量に追従し易い軟弱地盤、④変形しやすい管材、⑤管路摩擦係数が低い、の5点が挙げられます。滑落現象と同様に地中箱(マンホール, ハンドホールなど)内のケーブルが管路へと引き込まれてしまい不具合が起きる可能性があります。そのため、波乗り現象対策の要否を検討します。

2.土木技術設計

管材選定

安定した自営電線路構築のためには埋設管路が健全である必要があります。管路埋設を行う土地の交通量、通行車両等の状況、使用するケーブルサイズ、材料コスト及び施工コストを考慮し最適な管材を選定します。

地中箱(マンホール、ハンドホールなど)選定

熱伸縮設計で実施したオフセット設計に基づいた所要サイズにて構造計算を実施し、必要とされる強度を満たす地中箱を選定します。設置場所、搬入路の状況により分割形状を選定します。

敷設断面設計

管路埋設工事では、掘削量がコストに大きく影響します。既設舗装断面、埋設管の孔数、管径、必要離隔等の条件を満たしながら、掘削断面積をなるべく小さくするよう管路配置を検討します。他社線も含めた電力ケーブルの発熱も考慮して送電容量を満たした設計を行います。

小口径推進設計

河川や水路、鉄道敷などを横断する開削工事が不可能な場合、推進工法を採用するケースがあります。横断物件との離隔、立坑の設置位置、立坑の構造や推進機の選定を行います。

専用橋設計

径間長に従い、安全性・経済性を考慮した単純梁構造、トラス構造等のケーブルのための専用橋を設計します。専用橋を支える橋台、基礎設計はもちろん、専用橋と埋設管路との取り合いにおける引入れ可能な管路線形も考慮し、施工性にも配慮したケーブルのための専用橋を提案します。

3.架空線技術設計

架空送電線

FENが扱う主な架空送電線は、①導体そのままの裸線、②導体を被覆した線である絶縁電線、③CVTケーブルなどをメッセンジャーワイヤーで吊架した架空ケーブルとなります。裸線は、鉄塔を支持材、絶縁電線と架空ケーブルは主にコンクリート柱(電柱)を支持材とした電線路を設計します。

鉄塔・鉄構設計

電力会社様との連系点には欠かせない鉄塔や引留め鉄構、大きな河川の横断部を架空線で横断する場合等の地中送電線立上げ鉄塔も設計します。

電柱設計

絶縁電線や架空ケーブルの支持材となるコンクリート柱や鋼管柱等の電柱・支線などの仕様選定を行います。電柱には支線を張るのが一般的ですが、支線を張るスペースが無い場合や電線張力が大きくなる場合には、自立柱方式を適用するなど現場状況を考慮した設計を行います。

仮設設計

架空送電線では山間部や、農地など、機材運搬車両が容易に入れないところに鉄塔を建てる場合が多々あります。山間部または高低差の大きな場所ではモノレールを用いたり、田園地帯などの軟弱地盤には、樹脂製敷板、敷き鉄板など仮設備を設計します。